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インタビュー:本学学生の梶原 哲司さんが全豪ディベート大会で優勝

国際教養大学4年次の梶原 哲司(かじはら てつし)さんの所属するディベートチームが、全豪ディベート大会(Australian Intervarsity Debating Championships(別名:Easters))で優勝しました。また梶原さんは全豪ディベート優勝にとどまらず、オーストラリアの哲学オリンピック(2023 Tertiary Ethics Olympiad)でも、銅メダルを獲得するという快挙を成し遂げました。

梶原さんは本学の交換留学制度のもと、2023年2月から11月までオーストラリア国立大学(ANU:The Australian National University)に留学し、同大学のディベート部(ANU Debating Society)のメンバーとしてチームに所属していました。

梶原さんとチームメイトの写真
ディベートのチームメイトと(写真右が梶原さん)

インタビューでは、全豪大会のお話をはじめ、海外のディベート事情や裏話、梶原さんのディベートへの思いなどを深堀りしました。また、梶原さんからは、AIUを目指す高校生やこれから留学に出発するAIUの後輩たちへのメッセージもいただきました。

聞き手:AIU広報チーム

決勝戦で感じた手応え

AIU広報チーム(以下、AIU):今回の全豪大会には3人チームで出場されたと伺いました。事前にチームが組まれていたのでしょうか?

梶原さん:チーム編成は「トライアル」という方式で決めました。まずはみんなでディベートして、それを海外の有名なディベーターが評価してくれました。そのなかで成績が良かった人から順にチームに振り分けられていきました。全豪大会はオーストラリアで一番大きな大会で、ANUからは6~7チームほど出場していました。

トライアルでAチームに入れたことが、今回の全豪大会で優勝できた大きな決め手になったと思っています。実は個人的な嬉しさとしては、大会で優勝したときよりもトライアルでうまくAチームに入れたときの方が大きく、一番達成感を感じた瞬間でもありました。大会で優勝できたのは、正直、チームメイトの2人のおかげです。

AIU:トライアルの段階で梶原さんの力が評価されて、その後もご自身の能力を磨き、努力をされ、全豪大会に出場されたんですね。全豪大会のなかで印象的だったことや面白かった瞬間、手応えがあった瞬間はありますか?

梶原さん:印象的だったのは決勝戦のテーマです。『AP(Artificial Persona)が存在する世界がいいか、存在しない世界かいいか』というお題でした。「AP」とは誰かのアイデンティティをコピーして、その人物にできるだけ近い思考ができるAIのことです。私たちのチームは否定(存在しない方がいい)側でディベートしたのですが、プライバシーを保護する観点からの意見や、エラーのリスクがあり、APの意見があたかも本人の意見と捉えられてしまう危険を述べました。否定側の方が自分の直感にも近かったため、そういう話ができたのはすごく感触がよかったです。この話をしたラウンドが、実は自分のなかでは一番いいスピーチができたラウンドでした。

また、相手が「APに働かせればいいよいのでは?」という意見を述べていて、「AIが働いたらそのAI企業だけが利益を得るけれど、APが働いて利益を出したら、著作権的にAPのモデルになった人の方にも利益が行くのではないか。だからAIカンパニーが優位にならなくていいよね」という賛成意見が出ていました。そうした賛成側の意見に対して、どのように反応しようかとメンバーで考えていました。そこで私が、「もしみんなの性格をコピーしたAIができたら、そのAIたちは多分みんな『働きたくない』と言うだろう」と反論したところ、それがとてもウケたんです。その瞬間はすごく嬉しかったですね。

表彰式の写真
全豪ディベート大会の表彰式にて(写真左が梶原さん)

AIU:与えられたテーマに対して賛成側?反対側のどちらになるかも直前に知らされるそうですね。自分が本当に思っていることと違う立場で意見を言わないといけないときは難しくないですか?

梶原さん:自分が強い意見を持っているテーマがあまり出てこないことが多いので、実はそこまで困ったことはないです。もちろん、ディベートをする人のなかには「自分は絶対こっち」という意見を持っている人もいると思います。ですがどちらかというと私は決まった立場をあまり持っていないので、「どっちの話もわかるな」というテーマがたくさんあります。

でもこれは、同時に自分の短所でもあると感じています。個人的にはそれがディベートの弊害でもあると感じていて、ディベート以外の場において自分の意見を持つことは大事だと思っています。周りの友人たちからは「物事を多角的に見ることができていて、いいんじゃない?」と言ってもらえるのですが、個人的には物事を多角的に見てから立場を決めていくべきだと思っているので、他の人に比べると私は立場を決めることが苦手なのだと思います。

AIUを志したきっかけ

AIU:梶原さんは、なぜそもそもAIUに進学を決めたのでしょうか?また、AIUに入学する前の高校時代の経験を聞かせてください。

梶原さん:AIUを志したのにはいくつか理由があります。まず1つ目に、単純に英語が好きでした。英語のディベートも英語のスピーチも実は高校から取り組んでいて、高校時代はディベートの全国大会で上位に入賞した経験があります。ディベートやスピーチなどで話して順位を競う場も好きでしたし、そもそも英語を話すことが好きでした。そうしたところから自然と「英語をもっとやりたいな」という思いがありました。

2つ目に、高校時代は教師になりたいと思っていたので、教員免許が取れる大学に進学したいと思っていました。私は英語の教師になりたかったのですが、「英語の教師は英語だけに力を入れて勉強していてもダメだ」という意識がありました。最近は学習指導要領が変わったこともあり、論理表現や自分の考えをうまく表現する必要がある分野や科目が出てきました。それに伴って「英語でいろんなことを勉強できたら理想的だな」と思っていました。

私は数学や科学が苦手でしたが、それらの科目も理解していないと、将来自分の受け持った生徒が「数学や科学や音楽に興味がある」と言ったときに上手くサポートしてあげられないだろうなと考え、色々な分野の知識をつけておく必要があると思っていました。

そのため、「英語だけでなく様々な分野を学べること」と「教員免許が取得できること」というベン図の重なりがAIUにはあったという点が、AIUを志望するうえで大きかったと思います。

ちなみに最近は、卒業後すぐに教師を目指すのではなく、大学院に進学したり、就職してみたいと思うようになりました。

学生と教員の集合写真
学内のディベートイベント「AIU Debating Society」にて(写真の上段左から2人目が梶原さん)

「自分の意見を伝える時間が確保されている」という安心感

AIU:AIUにもディベート部がありますが、ディベートの活動ではそもそも何をするのかを教えてください。

梶原さん:私が高校時代にしていたディベートと、大学でしていたディベートでは少し違いがあります。高校では「準備型ディベート」、大学では「即興型ディベート」という異なるスタイルでディベートをしてきました。