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私の留学レポート:ルーマニア?ブカレスト大学?高島 有紗さん(1)~
国際教養大学では1年間の留学が必須となっています。語学留学ではありません。専門科目を現地の学生と共に履修し、本学での卒業単位の一部として認められる必要がある、「本気」の留学。学生が、それぞれ深めたい学問分野に応じて200以上ある海外提携大学の中から選択します。良いことばかりじゃない、ときには苦しいことや辛いこともあるのがAIUの「本気」の留学です。ここでは、そんな学生一人ひとりのストーリーを自身の言葉でレポートしてもらいます。
今回は、ルーマニアに留学中の高島 有紗(たかしま ありさ)さんのレポート第1弾をご紹介します。
これまでの「私の留学レポート」シリーズはこちらからご覧ください。
皆さんこんにちは!初めまして!2021年春入学、高島 有紗です。神奈川県出身でグローバル?スタディズ領域に所属しています。これから3回の留学レポートを皆さんにお届けしますので、どうぞよろしくお願いします。
ルーマニアの印象
私は2023年9月半ばからルーマニアの首都ブカレストに住んでいます。ルーマニアは中欧?ロシア?オスマン(トルコ)の3つの文化圏の影響を受けている国です。中心部には西洋建築の華やかなコンサートホールや美術館が建ち並び、コンクリートのアパート群からは共産主義時代の名残を確認できます。クリスマスマーケットなどのイベントでは必ずトルコの伝統菓子が売られています。
物価は現在高騰していて日本とほとんど変わりませんが、野菜や果物、チーズなどの食材は日本より安く手に入れることができます。ウクライナの隣の国ではあるものの、外国人の私が生活する限り、日常のなかで戦争の影響を感じる機会は物価の高騰を除いてほとんどありません。しかし美術館で会ったウクライナの人に「避難してきた」と言われたときには、今も隣国で戦争が起きていること、日常と戦争が地続きであることを感じました。
秋冬のブカレストは私の出身地である神奈川よりは寒く、秋田よりは暖かいです。11月中旬から曇りや雨の日が増えてきましたが、それまでは毎日青空でとても過ごしやすい気候でした。
国内一の歴史をもつブカレスト大学へ
ブカレスト大学(University of Bucharest)は19学部を擁し国内一の歴史と伝統を誇る総合大学です。ルーマニアの首都ブカレストの街に講義棟?学生寮?図書館などの大学施設が点在しています。在籍学生数は約3万3千人、授業はルーマニア語/英語/フランス語のいずれかで開講されています。ルーマニアの次にフランス出身の学生が多い印象です。私は政治学部に所属し、国際関係論に関する授業を英語で受けています。ほとんどがヨーロッパの学生で、30人に1人の割合で東アジアの学生がいます。
大学の寮には様々な国?地域出身の学生が住んでいます。アルメニア出身の学生に洗濯機の使い方を教えてもらったり、ボリビア?ニカラグア?パナマからの学生たちに混じって教会に行ったり、タイ出身の学生から手料理を振る舞ってもらったり…。初めて会う国?地域の学生たちとの出会いは新鮮です。
この地で学びたい理由
留学先は「ヨーロッパで、生活費が安くて、多くの日本の人に馴染みがない国に行きたい!」という理由で選びました。
具体的には、まず146校の申請可能大学からヨーロッパで住居費?食費が安そうな地域を絞りました。また、郊外よりは都市部に立地する大学を探しました。初めての海外生活はその国を代表する都市で過ごしたいと思っていたからです。この段階で候補は3校になりました。最後はAIUの卒業単位への換算を考え、AIU生が過去に履修した授業を確認できる「互換歴」という資料を参考に決めました。
新しい目標が生まれた発端は文学から
AIUでは英語の授業や卒業要件の必修科目ばかり履修していたため、留学中は自分の興味の強い政治?国際関係論への理解を深めることを目標にしています。現在は「Global Justice(グローバルな正義論)」や「European Political Culture(欧州の政治文化)」といった授業を受けています。最近は「Global Civil Society(地球市民社会論)」 の授業で香港民主化運動に関するドキュメンタリーを観ました。
またクラブ活動やアルバイトに追われていない今だからこそ、本をたくさん読みたいと思っています。そう思うきっかけとなったルーマニアの学生、中国の留学生との文学談義を紹介します。
私が日本人だからでしょうか、村上 春樹について聞かれたことが始まりです。そこから好きな本や小説の女性の描き方について話題が広がりました。その場にいた4人が幼少期に若草物語を読んでいたという共通点は、ささやかながらも心躍る発見でした。好きな小説を尋ねられたので知らないだろうと思いながら、東野 圭吾著の『白夜行』を伝えたところ、読んだことがある人が2人もいました。国も母語も違う人と同じ小説の話ができたことに驚きました。彼らからはカフカやヘミングウェイ、ドストエフスキーを強く薦められました。そんな機会もあり、今まで触れてこなかった世界の名作文学を読むことも目標の一つです。彼らと話すのは楽しかった一方で自分の言語力の限界を感じ、もっと英語が話せるようになりたい、とも思いました。薦めてもらった名作文学はまずは日本語で、いつかは英語でも読めるようになりたいです。
予想より暮らしやすいルーマニアでの生活
AIUでは入学後、「英語で学ぶための英語」を徹底的に学ぶカリキュラム(EAP:英語集中プログラム)があります。その期間は個人の英語力によって決まり、半年の場合もありますが私は1年半でした。
残念ながら大学3年目の今でも英語はとても苦手です! いつまでも消えない英語への苦手意識、海外に対する漠然とした恐怖、体調を崩さないか、ホームシックにならないか、物を盗まれないか… 留学前は心配なことが山積みでした。
実際のルーマニアでの生活では、バスに乗る、スーパーでの買い物、一つひとつの行動にドキドキしました。しかし想像よりトラブルも衝撃も少なく、海外で暮らすことがこんなに簡単だったのか、とびっくりしています。
思い返すと大学入学当時、親元を離れ秋田での生活が始まり、初めてAIUの授業を受けたときの方がホームシックになりました(笑)。AIUでの経験が自分でも気がつかないうちに少しずつ私を強くしてくれた気がします。
国際センターから一言
AIUの留学先は英語圏に留まらず、高島さんが選択したルーマニアのように日本人の留学先としては珍しい国も含まれます。そんな国にたまたま集ったバックグランドの違う学生たちが日本や海外の文学について語り合うエピソードには、文学が持つ普遍的な価値が感じられます。文学を語りたい、そんな強い思いがきっと高島さんの英語力も押し上げてくれるはずです。ぜひそのモチベーションを大事にしつつ、これから長く続く留学生活を充実したものにしてください。
英語版ウェブサイトでは、留学生たちの本学での留学体験記を「Student Voice」として紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。